【よもやま】昭憲皇太后の御歌
2020年11月16日
髪かたち つくろうたびに まず思え おのが心の すがたいかにと
私たちは、日々入浴洗顔するのは、日課になっていますが、心の姿を気にすることはほとんどありません。むしろ自分の心を中心として、思うがまま生活し、日々を過ごしている人がほとんどです。しかし、このおのが心ほど不可解なものはありません。一番身近にありながら自分ではなかなか見えにくいものなのです。
弘法大師は、秘密曼荼羅十住心論 (ひみつまんだらじゅうじゅうしんろん)という大書の冒頭に「地獄は何処にあり」「我が心の中に有り」と自問自答しています。
我が心のなかに、「地獄もあれば、極楽もある」十人十色といいますが、同じ環境に置かれていても、その中にいる人たちの見えている世界は全く違った世界なのです。
意思の疎通を図るため言葉を通じて何とか通じ合えるといっても、世界は全く違う世界に生きています。
この世に生を受ける前からの因縁と生を受けてからの因縁が複雑絡み合い私たちの心というものを創りあげているからです。生を受ける前とは、父母の因縁です。ここではおどろおどろしく考えることは避け簡単に遺伝子による性格などの継承としておきます。また、生まれてからは、育ってきた環境をさします。
赤い花は、正常な目を持つ人が見れば、誰に聞いても赤い花と答えるでしょうが、人それぞれの心に映る花は「美しかったり」「楽しかったり」「悲しかったり」「恐ろしかったり」するのです。
このように「おのが心の すがた」は、なかなか見えにくいものです。「髪かたち つくろうたびに まず思え」の心構えで一日のスタートを切ってみてはいかがでしょうか。