仏法を聞くはなお幸い
2025年11月06日

「仏法を聞くはなお幸い」。
この弘法大師の言葉を思いながら、山形の海向寺を訪れた。
そこには即身仏として祀られる僧の静かな姿がある。
長い修行の末、身をもって仏の教えを示した尊い存在。
その前に立つと、言葉では表せぬ厳粛さと、深い慈悲を感じた。
仏法は、ただ経を読むことや説法を聞くことだけではない。
朝の鳥の声、草むらの虫の音、風のそよぎ——
そのすべてが、仏の教えを語っているように思える。
自然の中に身を置けば、静かに語りかけてくる声がある。
それは「生かされていること」への感謝の声でもあるのだ。
仏法聞き難しというが、実はいつも傍にある。
ただ、私たちが心を閉ざして聞こうとしないだけ。
海向寺を後にしたとき、遠くで鳥が鳴いた。
その声がまるで「よく聞け、よく生きよ」と語りかけるように響いた。
その瞬間、胸の奥に静かな光が差し込んだ気がした。