【大慈大悲 ― すべてを包む心】
2025年12月04日

仏教で最も尊い言葉のひとつに「大慈大悲」があります。大慈とは、すべての命に幸せを与えようと願う心。大悲とは、その苦しみを抜き取りたいと願う心。この二つが一つになったとき、人は仏の心へと最も近づくといわれます。
境内を歩くと、その意味が自然と胸に落ちてきます。朝の池で鯉や金魚が無心に餌を求める姿、強風にも耐えて立つ榧の木、四季折々の花がそっと咲く永代供養墓――それらは皆、私たちと同じ「生きようとする力」を持つ存在です。大慈大悲の心とは、その力に寄り添い、尊い命をありのままに受け止める視線にほかなりません。
人は時に、怒りや悲しみに心を曇らせ、見える世界を狭くしてしまいます。しかし大慈大悲の心で相手を見つめると、不思議と胸のわだかまりが解けていきます。相手の苦しみが見え、こちらの苦も軽くなるのです。
今日出会う人へ、そして自分自身へ。
ひとつ深呼吸し、「大慈大悲」の心をそっと向けてみませんか。
その瞬間、世界は必ず柔らかさを取り戻していきます。